留置場

普通の日記

奇跡

恥ずかしさに脅迫された人間の人生の虚しさたるや。

 

どこへ行こうとしても、ちっぽけな羞恥心に鋭い刃をグサリと突き刺し、お前はここから先へ踏み込むべき人間じゃねえ、と迫る悪魔が付きまとう。

「あそこにいる人間たちを見ろ、あんなに楽しそうに騒いでいる。お前にあれができるか? できないだろう。

自分の顔を鏡で見てみろ。しけた面してやがる。お前の顔は、あいつらとは違う、そんなことはその表情を見比べれば一発で分かるだろう?

そんなつまらなそうな顔で、あそこへ混じっちゃいけねえ。楽園を穢しちゃいけねえ。お前だって、つまらない顔した新入りが入ってきたら憎いだろ?」

 

悪魔は俺が方角を変えて数センチ歩き出そうとすれば、また俺の前に立ちはだかる。

ダイヤモンドパールのなぞのばしょで歩数カウントを間違えた人間の如く、どこへ向いても壁だらけの世界。

 

そんなのは単なる妄想、考えすぎ。馬鹿らしいじゃないか、ただちょっと恥ずかしがり屋なだけだ。大丈夫大丈夫。

そう自分に言い聞かせても、俺は楽園へ踏み入ることはできない。悪魔の言った言葉が脳裏にへばりついている。俺が入ったら、楽園を壊しちゃうんじゃないか? そうしたら俺は悪魔になってしまう。

悪魔になるのは嫌だ。俺は人間だ。人間でいたい。

俺が人間でいるためには、一歩も動いてはいけないんだ。一歩でも動いたら最後、楽園で遊んでいる憧れの人間という生き物には、二度と戻れない。

 

だから奇跡を待つしかない。

天使が舞い降りる日が来るのを。